施設の概要
柴胡苑は、相模原市中央区の閑静な住宅街にある。市内に多くの障害者支援施設、高齢者施設、保育園、グループホーム、障害福祉サービス事業所等を運営する社会福祉法人相模福祉村が、平成9年11月に開所した特別養護老人ホームである。入所定員30名、短期入所6名、通所サービス定員12名の従来型の施設で、従来の施設ケアへの危機感をもとに新しいケアの方向性を目指して設立された。平成28年3月末時点の利用者数は30名で、入所者の平均要介護度は4.6である。全館バリアフリーの開放的な生活空間は、施設全体を包む木の優しい温もりが特徴的である。各階ごとに食堂やサロン、浴室が完備されている。 『ふくし村を「わが街の文化」に』を理念としている。職員は、利用者が地域で一緒に暮らし、本音で暮らせるケアの新しい方向性を目指し、また、認知症の高齢者への質の高いサービス提供、職員の資質・専門性の向上を目指した施設運営に努めている。
優れている点
- 利用者の個々の思いを「施設サービス計画書」に明記し、課題ごとにサービス支援の実践結果を日々チェックする仕組みを整備し、「施設サービス計画書」の実践に努めている。 「介護計画の作成等に関するマニュアル」を作成し、「その人らしい自立」の実現に向けたサービスを行うことを明記している。アセスメントやカンファレンス、モニタリングの着眼点を明記し、「施設サービス計画書」のサービスの品質向上を図っている。「施設サービス計画書」の課題に沿って、月ごとにモニタリングを実施し、また、3ヶ月ごとにアセスメントを実施し、利用者支援ニーズの変化を把握し、カンファレンスでサービス状況を職員相互に確認し計画の見直しを行っている。「ホーム個人サービス表」に毎日のケース記録を詳細に記述している。また、「施設サービス計画書」の短期計画に沿って実践できているかを課題担当職員が毎日チェックし結果を記録している。日々の利用者の生活状況の記録をカンファレンスで検討し、「施設サービス計画書」の見直しに反映している。
- 利用者の高齢化・重度化の状況の中で、食事形態を工夫し可能な限り長く、口から食事ができるように支援している。 利用者の要介護度の平均は4.6である。重度化の傾向の中で本人に合った食事形態の摂食に取組んでいる。常食普通食、常食ソフト食、やわらかご飯ソフト食、粥ソフト食、粥ゼリー食、ゼリー食、クラッシュゼリー(ペースト・ミキサー)等の食事形態である。利用者の状態に合わせて随時形態変更を行っている。他に医師の指示のもとに糖尿病食等の4種類の療養食を提供している。栄養ケアマネジメントを推進している。3ヶ月ごとに介護、看護、管理栄養士等関係者が栄養カンファレンスを実施し、「栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング」記録を活用し、利用者ごとの食生活と低栄養リスクの状況を確認している。カンファレンスで利用者ごとの長期・短期目標や食事形態、食事量等について話し合い、栄養ケア計画の見直しを行っている。
- 職員全員が人権意識を徹底し、虐待や身体拘束の防止に努めている。 事業計画に「職員倫理綱領」を掲載し、利用者の人権を守るために、毅然とした対応をすることを明記し全職員に配付し周知している。年度初めの全体会で全職員が「人権ガイドライン」の読み合わせをして、人権意識の徹底を図っている。「人権ガイドライン」は、ことば遣い等の人権擁護に対する日々の職員の基本的態度やプライバシー保護について明記している。毎年人権アンケートを実施し、全職員の人権意識の注意を喚起している。また、身体拘束廃止マニュアルを作成し、虐待や身体拘束防止徹底のために職員に禁止している行為の具体事例を示している。身体拘束・事故防止委員会を立ち上げ、毎月のヒヤリハット報告及び異例報告を分析し、身体拘束防止等に関する勉強会を3ヶ月ごとに開催し、全職員に意識の徹底を図っている。
- チームワークによる重度の認知症利用者のエンパワーメントを尊重した支援を実践している。 入院し、看取り介護が必要と観られた要介護5の重度認知症の利用者が、退院後にチームワークによる 支援を行うことで、看取り状況から回復した事例がある。医師、生活相談、介護、医務、栄養の関係者が連携し、退院時の状況を全職員が周知し、できる動作の確認から支援を開始した。丁寧に口腔ケアと水分補給を行うことで、徐々に食事への本人の意欲がでてきた。食事の量を少しずつ調整し、すっかり食事ができるようになり体調が回復した。利用者の回復への思いを支える職員の諦めない努力が利用者本人の生きる力に繋がっている。
- 施設内での感染症発生の防止に力を入れている。 「感染症対策マニュアル」及び「感染症対策に関する指針」を作成し、感染経路の遮断等の感染症の種類別の蔓延防止について明らかにしている。感染症予防・安全対策委員会を立ち上げ感染症予防に努めている。ご家族の面会時の食べ物の持ち込みの制限や職員の健康チェック(就業前の手洗い、体温チェック)、うがい、マスク着用の徹底や感染症流行時の各階利用者の移動制限等の対策を講じている。ヒヤリハット事例から、感染物処理方法の統一実施について全職員を対象に実施確認を行っている。平成26、27年度は施設内の感染症発生は0件であった。
改善を要する点
利用者の高齢化・重度化の状況のなかで、定期的にサービス状況の自己評価を実施し、サービス改善につなぐ取り組みが期待される。 厚生労働省の第三者評価ガイドラインに沿って全職員が参加し定期的に自己評価を実施し、職員の気づきをサービス改善につなげる取り組みが期待される。サービスニーズの変化に対する自己評価の結果を利用者・家族に説明し、課題を共有する取り組みが期待される。