施設の概要:
三浦しらとり園は、横須賀市の京急線長沢駅から徒歩10分程度の緑豊かな自然の中にある。障害者支援の複合施設として重い障害を持つ児童や成人の入所・通所の支援を行っている。昭和38年に神奈川県立長沢学園として開設し、昭和58年に成人の入所・通所部門を加えて三浦しらとり園として施設運営を開始した。平成23年4月から社会福祉法人清和会が指定管理者として施設運営を引き継ぎ現在に至っている。鉄筋2階建の施設で園内に大きな体育館やプールを保有し、地域住民にも開放している。知的障害児入所(定員40名)、成人入所(定員88名)、通所生活介護(定員95名)、自立訓練(定員6名)及び短期入所(定員24名)の事業を運営しており、知的障害児分野が今回の第三者評価の対象である。 園の理念に「一人ひとりの意思を尊重します。」「一人ひとりの豊かな生活を実現するよう努めます。」「一人ひとりよりよい地域での生活をめざします。」を謳っている。理念に基づいて利用者の人権尊重や利用者や家族に配慮した個別支援計画の策定とその着実な実行等を基本方針に掲げている。平成24年度年間運営計画の重点目標に、県立時代に蓄積された支援・運営を確実に引き継ぎ、民営の良い面と融和させることによって更なるサービスの向上を目指すことを明記し、日々の利用者支援に務めている。
優れている点:
- 利用者の人権尊重を施設運営の基本方針に謳っている。平成24 年度の重点課題に、利用者の人権擁護・虐待防止への取り組みを推進しサービスの向上に努めることを掲げている。人権委員会を立ち上げ人権パンフレット「生きているっていいなⅣ」を作成し、利用者が自らの意思で行動し豊な生活ができるように支援することや、人格を傷つける行為をしないことなどを利用者や家族に伝えている。職員の言葉遣い及び態度マニュアルを作成し、相手の感情に寄り添う温かい態度と熱心に利用者の声に耳を傾けることの大切さを職員に周知している。また、身体拘束ゼロマニュアルを作成し、車椅子やベッド、衣類等拘束に繋がる事例を明記し拘束をしないことへの注意を喚起している。特に知的障害者への虐待につながりやすい罰としての拘束や、薬物拘束などを行わないことを明記し職員に徹底している。
- 利用者一人ひとりの障害特性に配慮した個別支援計画を策定している。平成24 年度年間運営計画の重点課題に個別支援の充実を掲げ、栄養ケア計画、リハビリテーション計画を含め、利用者・家族の意思を尊重し、本人のストレングスに沿った個別支援計画を作成することを明記している。個別支援計画作成及び運用マニュアルを整備し、ケアマネジメントの手法によるアセスメントやモニタリングの内容について詳細に規定している。アセスメントでは特に学齢期の児童の特質に配慮し、本人の本来もつ能力や強さのプラス面の視点で利用者ニーズを把握するようにしている。個別支援計画の策定に際しては、利用者自身の努力目標ではなくどのような支援を行えば利用者の生活が豊かに広がるのかに視点を置いて個別支援の課題を設定している。また、半年ごとにモニタリングを行い、個別支援計画の課題ごとに実績を評価し、利用者の変化の状況を注意深く観察し次の計画に活かすようにしている。
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医療と福祉の連携を図り、利用者が安心して日常生活を送れるように支援している。湘南病院と連携し、園内に診療所を開設している。診療所には月曜から金曜日まで医師が常駐し随時利用者を診察し、また、内科検診や歯科検診など毎年10種類以上の定期検診を行っている。夜間や休日は湘南病院本院と連携し緊急時の対応体制を整備している。歯科医が利用者の口腔ケアを指導し嚥下障害の利用者の食形態等を指導している。健康管理マニュアルを作成し、利用者の障害特性に応じた健康管理に努めている。利用者一人ひとりの健康カードを作成し、利用者の発作の対応や食物アレルギーに関する情報など、食事や服薬に関する利用者の日常生活における留意点を明記し職員に周知している。受診に際しては健康カードを携帯し、また、医師の指示内容を診療連絡簿に記録し職員に周知し医療情報の共有を図っている。
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1人ひとりの特性に配慮した強度行動障害者への支援に努めている。神奈川県の強度行動障害事業の実施施設としての取り組みを推進しており、強度行動障害事業専任職員等の担当職員を配置し強度行動障害に特徴的な自傷・他害の行動などの障害の軽減化を図るとともに、利用者・家族等への相談や助言を行っている。平成24 年度施設の運営計画に、行動障害の基本的支援技術や地域ニーズに対応したスキルの向上を図るべく積極的に外部・内部の研修受講を明記している。平成23年度は、特に支援の難しい知的障害者に対し、26 名(内児童13名)を強度行動障害の対象者にさだめ、138回(内児童55回)のカンファレンスと297件(内児童45件)の個別支援を実施したことを事業報告書に明記している。また、年間14回延べ30名を超える職員が外部の事例研修や実地研修に参加し、強度行動障害に対する支援技術の強化を図っている。
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リスクマネジメント委員会を毎月開催し、毎月のインシデント報告書の内容を分析し事故防止に努めている。毎月リスクマネジメント便りを発行し、インシデントや事故報告の時間や場所、インシデントの内容をグラフ化して職員に周知している。また、利用者別にインシデント報告の内容を分析し、対応や対策を一覧表にして職員に周知している。平成23年度は施設全体で2107 件のインシデント報告があり、報告の意識が職員に定着していることが伺える。また、事故報告は74件で、前年より15件の削減を図ることができた。職員は、リスクマネジメント委員会の通達事項を寮会議で検討し、薬ケースのセットのダブルチェックの徹底など、インシデント分析に基づくリスクマネジメント委員会の指摘事項への対策を話し合い事故防止に努めている。