〇高品質を目指すクリーニング作業が利用者の自信と自立意識につながっている
クリーニング作業は仕分け、洗濯、アイロン、プレス、たたみ等様々な工程がある。障害のある利用者にとっては、新たな仕事への取組みと一つ一つの作業品質の向上はとても難しい挑戦である。職員は、衣類のたたみ作業を効率よく簡易に行えるよう段ボールで作った洗濯たたみ機や、ボルトを固定する器具を作業台に設置し片手で作業ができるように工夫する等利用者一人ひとりへの合理的配慮に努めている。
職員は、利用者が挑戦したいと思っている作業をできないと決めつけず、まず一度やってみること、やってみて何が課題なのか、希望する作業に取りかかるために何が必要かを利用者と一緒に考え、利用者の意思決定に向けて情報提供を行っている。職員は利用者の支援ニーズを理解するために、共に過ごす時間を大切にしている。利用者の要望や興味を尊重し利用者のエンパワメントを支援している。
〇職員と利用者の信頼関係と作業の「見える化」を図ったことが働きやすい職場づくりにつながっている
施設長は、利用者と職員の信頼関係のもとに働きやすい職場作りを目指している。「相手を理解しようと努力し続けること、利用者の障害状況や価値観を十分理解し、それぞれに応じた関係の在り方を模索していくこと」等の取組みについて職員に周知し信頼関係の構築に努めている。
また、個々の業務の流れと分担を明確にし「業務の遂行状況の見える化」を図ったことで作業者の負担軽減につながっている。クリーニング業務は、取引先のニーズに合わせて細かな管理が必要である。取引先ごとの業務の詳細をマニュアル化し支援の標準化を図っている。
2024年3月に利用者全員を対象に面談方式による「働きやすさ」に関するアンケート調査を実施した結果、20名中15名が働きやすいと回答し、働きにくいの回答は1名であった。「仕事が楽しい」「職員がいつでも声をかけてくれる」「できない仕事はできる人がカバーしてくれる」等の意見であった。
〇取引先の拡大と工賃アップが利用者の就労意識の向上につながっている
積極的に営業活動を実施し作業量の拡大を目指している。令和5年度は新たに県内のリハビリ施設や施設外就労事業所として児童施設のクリーニング業務を受注し、また、今年度は、リネン会社から新規受注を受け企業との関係性を構築している。
工賃の支給については「作業評価表」「工賃支給明細書」を作成し、利用者に説明して工賃支給額に利用者が納得できるようにしている。就労継続支援A型事業利用者の令和5年度の平均賃金は月額157,343円、時間額1286円で、就労継続支援B型事業利用者は、月額平均工賃29,873円、時間額240円であった。高い工賃が利用者の就労意欲の向上につながっている。
〇職員の育成を目的とした個々の職員主体の目標管理制度の取組みが期待される
職員の目標管理シートや、自己チェックリスト等活用し、業務目標や能力目標を達成するために、いつまでに、何を、どのように取り組むか、スキルアップを図るためにどんな専門技術や知識・資格が必要か等、より具体的に課題の「見える化」を図ることが望まれる。職員一人ひとりの目標管理と上司と定期的に面談を実施することで達成度を評価し、目標達成に向けた意識の共有を図る取組みが期待される。
〇利用者・家族等の苦情・相談の内容分析と課題の整備・対策の記録が望まれる。
令和5年度の苦情申出件数は0件で、今年度も1件のみであり、極めて少ない状況である。利用者が苦情や相談を言いづらい状況がないかの確認が求められる。相談記録から相談と苦情の内容を分析し、利用者の苦情を言いやすい雰囲気作りに課題がないかを評価し、苦情があればサービス向上につなげる対策の工夫が望まれる。