施設の概要:
三浦しらとり園は、京浜急行長沢駅から徒歩10分の三浦半島の海と山に囲まれた豊かな自然の中にある。評価対象事業は、知的障害者入所(定員88名)、生活介護(定員95名)、短期入所(定員24名)、自立訓練(定員6名)である。昭和38年に神奈川県立知的障害児施設長沢学園として開設し、昭和58年に成人の入所・通所部門を加えて三浦しらとり園として運営を開始した。平成23年4月に指定管理制度に移行し、社会福祉法人清和会が指定管理者として施設運営にあたっている。平成27年3月末の入所者数は、知的障害者83名(平均48歳)である。近年入所者の高齢化が進み、60歳代9名、70歳代3名が入所している。 重度・重複障害者を積極的に受け入れており、入所障害者の82%が障害支援区分5以上の重度障害者は入所者全体の99%を占めている。施設内に診療所を併設し医療的ケアが必要な利用者への医療環境を整備している。また、短期入所事業に取り組み利用者及び家族の地域生活支援に取り組んでいる。
優れている点:
- 身体拘束や虐待の防止等、利用者の人権擁護に努めている。
「利用者虐待防止ハンドブック」を全職員に配付し、虐待の芽は日常や支援の場に多く潜んでいることを明記し、虐待を起こさないためにどうすれば良いかを全職員に周知している。20項目の虐待の兆候に気づくためのチェックリストを用いて職員の人権擁護の意識の徹底を図っている。年間運営計画の平成26年度重点課題に、利用者の人権擁護、虐待防止への取り組みの推進を明記し、施設の人権パンフレット「生きているっていいな」に基づき人権擁護に取組むことを謳っている。人権委員会を立ち上げ、隔月に委員会を開催し、人権アンケートの実施や「職員の言葉遣い及び態度マニュアル」「身体拘束ゼロマニュアル」等の見直しを実施している。平成26年度より園の身体拘束ゼロに向けた進行管理を人権委員会で行っている。利用者の行動特性を理解し、自閉症、強度行動障害の理解を深めることで身体拘束防止に向けた職員の意識の強化を図っている。
- 利用者一人ひとりのストレングスに視点を置き、本人主体の個別支援計画を策定している。
「個別支援計画作成及び運用マニュアル」を作成し、利用者の豊かな人生を支えるための個別支援計画であることを明記し、作成を職員に周知している。アセスメントで利用者の希望する生活を把握し、できない事に着目するのではなく、利用者が本来持っている能力やストレングス(強み)に視点を置いて支援計画を策定している。個別支援計画の課題に沿って最長6ヶ月(自立訓練は3ヶ月)ごとにモニタリングを実施し、サービス支援の実績を評価している。モニタリング票に利用者の変化の状況や満足度、目標の達成度を明記し、支援の継続の有無と今後の方向性を明記し個別支援計画の見直しに反映している。立ち上がるとすぐ転倒してしまい歩行は無理だとされた利用者が、職員の見守りの中で転倒事故もなく手摺につかまって歩けるようになった事例がある。職員は本人のやる気を伸ばす支援を行っている。
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施設内に診療所を開設し、重度の障害者がいつでも診てもらえる安心できる環境を備えている。
湘南病院と連携し施設内に診療所を開いている。診療所は内科、外科、精神科、耳鼻科、脳神経外科、婦人科、歯科である。また、理学療法士を配置しリハビリテーション体制を整備している。随時入院も可能で平成26年度は入院した利用者36名中35名は湘南病院が受け入れている。平成26年度の診療所の利用実績は、内科等診療が3,323件、歯科診療1,658件の合計4,981件である。診療所と施設間の情報共有を図っている。既往症や入院歴、アレルギー、発作の状況等を明記した健康カードを作成し、受診や入院時の正確な情報伝達を図っている。また、利用者の日常生活のバイタル情報等を記録した健康チェック表を受診時医師に示している。医師は診察の結果を診療連絡簿に記入し本人や担当職員に指示している。
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利用者が楽しく安心して食事ができるように、食形態を工夫している。
7種類の食形態で食事を提供している。普通食、一口大、きざみ、超きざみ、超きざみソフト、ミキサー、ソフトの各形態である。また、医師の指示により普通食、低脂肪食、減塩食、糖尿病食、低エネルギー食、アレルギー食を提供している。昨年7月に食感を大切にした食事を利用者に楽しんでもらうために、超きざみソフト食を考案し提供している。歯科医や管理栄養士等で摂食嚥下チームを編成し、毎月寮の摂食状況を確認し食形態が適切であるかをチェックしている。
栄養ケアマネジメントを実施している。嚥下チームの巡回の結果を反映し利用者一人ひとりの栄養ケア計画を作成している。特に利用者の高齢化による栄養摂取や嚥下の状態の機能低下に配慮している。3ヶ月ごとにモニタリングを行い、個々の利用者の栄養ケアの結果を評価し改善につなげている。
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強度行動障害者や支援困難事例への利用者支援に努めている。
設立当初より重度の行動障害者等を積極的に受け入れている。平成26年度は、神奈川県強度行動障害対策生活支援事業対象者3名と三浦しらとり園独自の要綱により支援が必要と認めた準支援事業対象者4名を受け入れている。その他個別課題の7名の相談に応じている。強度行動障害児・者が自立した日常生活、又は社会生活を営むことを支援の目的としている。三浦しらとり園が中心となり横須賀、三浦地域の障害特性に関する知識と支援技術の向上を目的に強度行動障害に関する公開講座を実施している。平成26年度は5回の公開講座に延べ487名が受講している。また、他施設及び学校、関係機関からの行動障害に関する相談を受けて、専門的支援・助言を行い、平成26年度は延べ128回の個別支援会議を行い、また、135回のカンファレンスを開催し強度行動障害への対応に努めている。
改善を要する点:
- 不法行為発生時の対処方法の仕組みの整備が期待される。
職員による不法行為が発生した場合は、就業規則に則り、課長会議などで対応する事になる。しかし、具体的な対処方法などについて定めた文書が無く、明文化に向け検討中である。具体的な仕組み整備が期待される。
- 自己評価の結果の家族への開示が期待される。
平成平成19、24年の第三者評価の結果は家族に開示している。園内で独自に実施している自己評価の結果についても家族に開示し、家族の意見・要望の把握に努めサービス改善につなげる仕組みが期待される。